強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「ところで芳奈。今日はお前にも、良い知らせがあるぞ」
「良い知らせ?」
はて? 今日の還暦祝いの他に、何があるというのだろうか。検討もつかなくて母に視線を送るが、ただあやふやに微笑みを返すだけ。
なんだろう、何故かとても嫌な予感がする。一時、避難したほうがよさそうだ。
すっくと立ち上がりこの場から離れようとしたが、私の腕を父ががっちりと掴んでしまった。六十歳になっても普段から鍛えている父の力は、まだまだ衰えていない。
これは、いよいよヤバい感じ? なんとも言えない緊張が、身体中に充満する。
「今日の祝いの場で、お前の見合い相手を紹介する。と言ってもそれは建前で、近々お前の夫になる男だ」
「は、はあ!? 見合いとか夫とか、お父さん何言ってるの! 正気?」
突然降って湧いた話に驚くほかない。というより、驚きを飛び越えて怒りすら芽生え始める。
「正気も何も、芳奈のためを思ってのことだ。相手は、あの『luna caldo(ルナ・カルド)』の社長の息子だぞ」
「ルナ・カルド!?」