強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~

嘘と嘘

「芳奈、新しい商品のアイデアは考えてきた? いくつか候補を絞って、企画としてコンセプトに落とし込んどいて」

千登世(ちとせ)先輩が、私の席まで来てパソコンを覗き込んだ。

「了解です。ポキットの季節限定商品をメインに、三つくらい企画書を作成しようと思って」

「いいんじゃない。この前企画した商品も開発部が引き継いでくれてるし、最近の芳奈のセンスはいいと思うよ。その調子で頑張って」

「はい。千登世先輩、ありがとうございます」
 
ポンッと私の肩を軽く叩いた千登世先輩は、そのままフロアを出ていった。彼女の背中を見送ると、パソコンに向き直る。
 
小林千登世先輩は、私より五つ年上の二十八歳。昨年新入社員として商品企画部へ配属されたときから指導係として私に仕事を教えてくれ、まだまだ頼りない私をいつもフォローしてくれる頼もしい先輩だ。
 
千登世先輩に褒められると嬉しくて、ヤル気が出るんだよなぁ……。
 
ふんふんと鼻歌交じりに企画書を作ろうとして、ふとデスクの縁にある社内報に書かれた“栗城八雲”の文字に手が止まる。







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