たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
また叱られるだろうと覚悟して、坂東さんに電話をかけた。

とりあえず、彼女には今日あった一部始終を伝える。

全て聞き終わった坂東さんが電話の向こうで深いため息をついた。

「また突っ走っちゃったわね。今回のことはさすがにボスには内緒にできない」

「はい、わかってます」

「でもさ」

「はい……」

「今社長のマンションにいるんでしょう?あのマスコミ関係を一切寄せ付けない、錦小路社長の」

「ええ、まあ」

「都、でかしたじゃない!そこまでこぎつけるなんて、あの編集長ですら叶わない相手だったのに」

まさかのお褒めの言葉に驚く。

「で、どうなの?錦小路社長って相当なイケメンなわけ?」

「まぁ、イケメンの部類ではないでしょうか……」

「きゃー、やっぱりなんだぁ。で、イケメンでダンディでどんな女性も虜にされちゃう感じかしら?」

「全くもって私の好みではないです。イケメンなのは認めるけれど、相当に頑固ですし意地悪です。正直、取材依頼できたとしても、ろくでもない内容になる可能性もあります」

「都はえらく過小評価するのね。いやいや、あの社長が出てくれるっていうことが何よりも価値があるの。大丈夫よ。ここまでのし上がってきたやり手社長なんだから、絶対間違いはないって。でもさー、都も一緒にベルギー同行して、いい仲になんかなっちゃったりして!結婚式は思い切り盛大にやっちゃってよ」

坂東さんは、耳が痛くなるほど大きな声で興奮気味にしゃべるもんだからスマホを耳から軽く離す。

何がいい仲になるのよ。結婚?そんなこと千パーセントあり得ない。

相手は私よりも一歩も二歩も、いや、百歩も上手だ。

そのうえ、私とは真逆のタイプと言ってもいい。そんな相手とどうにかなるなんてあり得ない!

どうせベルギーでも、振り回されて嫌な思いを散々させられておしまい。

挙句の果てに取材もお断りなんてことにもなりかねないだろう。

「あの、ここまで来たところで取材拒否という可能性もありそうなので、念のため錦小路社長以外の候補者のリストアップをメールに送っておきます。編集長とも最悪の場合のことを考えて相談しておいてもらえますか?」

「いやよ。絶対取材とってきて!編集長も喜ぶわよー。今から夜のアイスタイムだから。じゃぁ、気を付けて行ってくるのよ。何か困ったことあればいつでも連絡してきて」

それだけ言うと電話は無残にも切れた。
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