(短編)初恋オムライス
「早く行って。乗り遅れるよ」


「うん。じゃバイバイ」


「またね、くるみちゃん」


彼は優しく微笑してくれたけど、ほんの少し寂しそうに見えた。


それは私のほうだって同じ。


これが永遠の別れってわけじゃない、そんなのわかってるけど。


だけど、なにかまだ彼に伝えたくて口を開いていた。


「あっくん、待ってるね」


「えっ?」


彼が一瞬目を見開いてからじっと私を見つめたから、あせった。


「あ、えっと、みんなで待ってるから。みんな、あっくんがいないと寂しいと思うんだ。だから」


「うん」


早口で言い訳みたいなことをまくしたてたら、彼はちょっとびっくりしているみたい。


私ったら何を言うつもりでいたんだろう。あっくんだってきっと変に思ったよね。


「じゃあねっ」


後ろ髪を引かれるような切ない気持ちになったけれど、私はもう振り返らずに電車のホームへと急いだ。


彼の話ってなんだったんだろう。


電車に揺られながらそのことばかり考えていた。


彼のことばかり、考えていた。
< 34 / 57 >

この作品をシェア

pagetop