後輩くんはワンコ時々オオカミ



「眞子先輩、実は・・・」



駅前でバスを降りて広場のベンチに腰掛けて早々

涼太は身体ごとこちらを向いた


「ん?どうしたの?」


「眞子先輩が嫌じゃなければ
なんですけど・・・」


「ん?」


何か言いづらいことなんだろうか?
最後まで言わない涼太を見ていると

少しずつ耳が垂れてきた


「どうしたの?」


クシャッと頭を撫でてしまう私もどうかと思うけれど
涼太のこの表情には弱い

少し目を細めて素直に撫でられていた涼太は


「あの・・・うちの母親なんですけど」


「うん」


「眞子先輩に会いたいって」


「へ?」


涼太のお母さんに会ったことある?
記憶を手繰り寄せようとした私に

涼太は“会ったことないですよ”と前置きしたあとで爆弾を投下した


「俺の好きな人に会いたいって」


「え」


まだ涼太の彼女になった訳じゃない
それなのに会いたいって?

湧いてくる疑問に答えるように


「それもありますけど・・・
母親、料理が趣味で、その・・・
眞子先輩の話をしたら
是非招待したいって煩いんです」


頭を掻きながら種明かしした


「うん、良いよ、喜んで」


涼太のことは置いといて
両親が渡米してからというもの
“お母さん”が作った料理に飢えている

たまに知夏の家にお呼ばれするけれど
ここ二ヶ月程は行ってない


「良かったぁ」


途端に元の笑顔に戻った涼太は

爆弾の二投目を落としてきた







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