後輩くんはワンコ時々オオカミ


「だって・・・、心配です
眞子先輩一人暮らしだし・・・」


本当は心配してくれることが嬉しい
でも・・・それを口にしたら
また真っ赤になりそうで予防線を張る


「ありがとう涼太」


そう言った時にはマンション到着で
なんだか微妙な空気が流れる


・・・ここはお茶でも誘うべき?


悩んでいるうちに
繋いだ手が引かれて涼太の腕の中に捕われた


「・・・っ」


「眞子先輩、今日から俺の彼女ですよね?」


「・・・うん」


「なんか、まだ夢みたいです。
明日、また迎えに来ますね?」


「・・・うん」


「じゃあ、中に入って
ここで見てるから」


そう言って離れた涼太は
一度視線を合わせてニッコリと微笑んだ


「送ってくれてありがとう
また、明日ね?!」


「はい」


「じゃあね、涼太も気をつけてね」


「はい」


少しずつマンションへ向けて足を進めるだけで
胸がキュッと苦しくなる

もっと一緒に居たいけれど
それを言えばワガママになるのかな?

今すぐ知夏に初心者向け恋愛相談でもしてもらいたい

そんなモヤっとした気分のまま
自動ドアをひとつ入ってオートロックを解除する

もう一つ自動ドアを入って振り返ると
涼太が小さく手を振っていた


「またね」


「はい」


気持ちを切り替えるように踵を返して
エレベーターホールへ向かう

背後の涼太を振り返らず
到着していたエレベーターに真っ直ぐ乗り込むと

ちょうど死角になる入り口に
涼太の姿はもう見えなくて
また胸がキュッと苦しい

ボタンを押して壁にもたれると目を閉じた









< 59 / 79 >

この作品をシェア

pagetop