エリート外科医の滴る愛妻欲~旦那様は今夜も愛を注ぎたい~
「苺はまだ、嫌いじゃないか?」

彼がずいぶん心配そうに尋ねてくるので、私は目を瞬かせる。

「ええ。苺は好きですが……」

なぜ彼がそんなことを尋ねてきたのか、その理由はデザートを見てわかった。

苺のデザートプレート。中央にパウンドケーキと苺ジャム、左側には、苺のクリームとピンクのメレンゲクッキーが添えられていて、粉砂糖が雪のように散らされていた。右側には苺ブリュレとシャーベット。

「私が苺、好きだったからですか?」

あまりにも極端に苺だったので、思わず笑ってしまった。

彼も「苺ばかり食べていたじゃないか」と昔を思い出しながら笑っている。

「デザートは、苺をふんだんに使ってくれと頼んだんだ」

「ありがとうございます。すごく嬉しいです」

私の好きなもので埋め尽くそうとする、彼のまっすぐな優しさが嬉しすぎてつい笑ってしまう。

まさかあの意地悪な彼が、こんなにも甘やかしたがりだったなんて、思いもしなかったから。

私もこれから、彼のことをもっとよく知らなければならないなと思った。もっと素敵な一面が見られる予感がして、わくわくする。

「食用のひまわりも考えたんだが」

「ひまわりは見るだけで充分ですよ」

デザートがひまわり尽くしになってしまう前に、しっかり好みを伝えておかなければ。

私にはもっとたくさん好きなものがあって、小さい頃よりもずっと大人の女性になったのだと。


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