【女の事件】とし子の悲劇・3~翼をなくした白鳥
第3話
2024年6月8日のことであった。

孤立無援状態のあきとさんは、JR札幌駅から歩いて5分のところにある生保会社の10階建てのビルの10階にある結婚相談の店に行った。

しかし、長時間待たされていたので気持ちがイライラしていた。

待っている間に見ていた説明ビデオを停止ボタンをクリックして止めた後、大きくため息をついた。

その後、スタッフさんと大ゲンカを起こした。

あきとさんは、数ヶ月前からひとりの力で結婚相手を探そうと思って、札幌市内の結婚相談の店を探し回ったが、リタイアした。

ダンナは、疲れていない時にあきとさんの結婚のことについて話し合いをすると言うたけど、口先だけで無関心になっていた。

ダンナの無関心が日増しに高まるばかりであったので、あきとさんのいらだちはなお高まっていた。

アタシはダンナに対して『いつになったらあきとさんの結婚のことを真剣に話し合うのよ…お願いだからあきとさんの結婚問題を解決してよ…ふたりきりの甘い暮らしがしたいのであれば、あきとさんに早くお嫁さんが来るように努力してよ!!』とせかしている。

ダンナは『オレはしんどいのだよ…疲れていないときにしてくれ…』と言うて、逃げていた。

2024年6月10日のことであった。

ところ変わって、ダンナが勤務している札幌市東区北7条にある総合商社にて…

従業員さんたちは、お昼ごはん時になったのでお弁当を食べたり、外へ食べに行ったりしていた。

ダンナは、お給料引きで注文をしているお弁当をひとりぼっちで食べていた。

この時、課長さんがダンナの元にやって来て『一緒にごはんを食べませんか?』と声をかけた後、となりの席に座って一緒にお昼ごはんを食べていた。

ダンナが固い表情をしていたので、課長さんはもうしわけない声でダンナに言うた。

「今月2日の総務のオオバヤシくんの結婚披露宴のことで、あきひろさんに無理をお願いをした上に、スピーチまで引き受けてくださって本当にありがとう…予算を大きくオーバーした分のお願いをしたお返しは…もう少しだけ待ってくれるかな?」
「もう少しって、どのくらい待てと言うのですか?」
「どのくらいと言っても…まあ、あと2ヶ月くらいは待ってもらえるかな…オオバヤシくんのお父さんが起こした交通事故の被害者遺族に支払う賠償金がまだ満額になっていないから、オオバヤシくんは困っているのだよ…あんまりせかさないでほしいな…」
「もういいでしょ…待てばいいのだろ待てば(ブツブツ)…」
「どうしたのだね?えらい深刻な顔をしているけど…」

課長さんは、ひと間隔空けてからダンナにこう言うた。

「ああそうだ…あきとさんは確かオオバヤシくんと同い年だったね。」
「そうですが…」
「あきとさんは、いつになったらお嫁さんをもらうのかなぁ…」
「(あつかましい声で)またその話かよ…」
「あきひろさんのことが心配になっているから聞いただけじゃないか!!あきとさんには好きなコがいないのかなぁ…男前で優しいのに…」
「あきとは、下請け会社の小さな工場で、安いお給料で働いている…お嫁さんを十分に養える金額ではない…少ないお給料でどうやってお嫁さんを養うのですか?そんなの無理ですよ(ブツブツ)」
「それだったら、夫婦共稼ぎをすればいいだけのことじゃないか…」
「共稼ぎ?」
「そうだよ。」
「それって…嫁さんに働けと言うことかよ(ブチッ)」
「他にどんな方法があると言うのだね!?オオバヤシくんはお給料が少ないから、お嫁さんも働いておカネを稼ぐのだよ…」
「オオバヤシくんは嫁さんをドレイにしている…これじゃあ、オオバヤシくんのお嫁さんがかわいそうだよ(ボソッ)」

ダンナの言葉に対して、課長さんはムッとした表情で言うた。

「ドレイだと…ほな、あきひろさんにとって夫婦共稼ぎをすると言うことは嫁さんをドレイにすること言うことか!?」
「まったくその通りです!!お嫁さんには専業主婦として家庭にいることが本分ですよ!!家にいてほしい…専業主婦として床の間にかざってもらう方が幸せだよ…オオバヤシのクソバカはなにを考えているのか…嫁さんを性フーゾクで働かせる気だな…けしからん奴だ(ブツブツ)」
「あきひろさん!!あんた、鏡に顔を写して顔をよく見てみろ!!あんたの顔は、あきとさんの結婚のことに無関心になっている顔をしているよ!!そのせいで、あきとさんの結婚適齢期が薄れたのだよ!!」
「ウルセー!!クソ野郎!!」
「なんだと!!」
「クソ野郎をクソ野郎と言うてなにが悪いのだ!!虫ケラ!!」

課長さんとダンナは、強烈な怒号をあげて大ゲンカを起こした。

この日の夕方6時前のことであった。

ところ変わって、豊平区水車町1丁目の家にて…

ダンナは、アタシに電話で『今夜は課長からのみに行かないかと誘われているから…晩ごはんはいらない…』と言ってきたので、アタシは電話でこう言うた。

「あなた…今夜は課長さんから誘われたからと言うているけど、晩ごはんを作るアタシの身にもなってよ…いつもいつも課長さんから誘われたからと言うて逃げないでよ!!…分かったわ…地下鉄が動いている内に帰って来てよ。」

受話器を置いたアタシは、大きくため息をついた。

そのあと、疲れて帰ってきて2階の部屋で休んでいるあきとさんに『ごはんができたわよ…』と何度も繰り返して呼んだ。

「あきとさーん…晩ごはんができているわよ…降りてきてごはんを食べてよ…」

4回目の呼びかけで、ようやくあきとさんが2階から降りてきた。

「あのな!!なんべんも繰り返して呼ぶなよ!!イライラするんだよ!!」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないのよぉ…アタシはみそ汁がさめたらおいしくなくなるから、冷めないうちに降りてきてって言っただけよ…もういいからイスに座ってごはんを食べよ!!」

あきとさんがイスに座った時、アタシはごはんとみそしるをついでいた。

テーブルの上には、焼き魚と青菜のごまあえときんぴらごぼうときゅうりのおつけものが置かれていた。

アタシがごはんをつぎおえた後、みそしるをつごうとしていたが、みそしるをつぐ手を途中で止めた。

あきとさんは、アタシになんでみそ汁をつがないのかと言った。

「あれ?みそしるは?」
「つぐわよ…だけど、少しぬるくなったから…温め直すだけよ。」
「みそしるいいよ…」
「みそしるを温めてあげるから…その間にゆっくりとかんで食べたらみそしるはすぐに温まるわよ…」
「みそしるいらないと言うているだろ!!」
「どうしてそんなに怒るのよ!?」
「かあさんは、みそしるがない食卓はイヤだと言うのか!?」
「そんなことは言ってないわよ…主食主菜副菜とおつゆがそろうように晩ごはんをつくってあげたのに、どうして文句ばかりを言うのよ!?」
「ふざけんなよ!!あんたは何でオヤジと再婚したのだ!?」
「だから、おとーさんとあきとさんと仲良く幸せに暮らしたいから再婚したのよ!!調味料も新しいのに全部買いそろえて、みそしるのイリコも高級品に変えて、料理の勉強も一生懸命にしたのよ…おとーさんがあきとさんにおいしい目玉焼きを作ってほしいと頼まれているのよ…あきとさんにバランスの取れた食事を作るのはおかーさんの役目なのよ!!」

(バーン!!)

あきとさんは、平手打ちでテーブルを思い切りたたいた後、アタシが作った料理をごみ袋に棄てた(すてた)。

「あきとさん!!せっかく作った晩ごはんをどうして棄てるのよ!!拾いなさい!!」

そしたらあきとさんは、にらんだ目付きでアタシをイカクした。

「あきとさん…やめて…アタシにどうしろと言いたいのよ?アタシがこの家にいるなと言いたいの!?」

あきとさんは、何も言わずにアタシをにらんだ目付きでイカクした後、アタシに背中を向けて食卓から出ていった。

アタシは、どうすることもできずに力がぬけてその場に座り込んだ。

家を飛び出したあきとさんは、すすきのまで行って、一晩中遊び通した。

ひとり家に取り残されたアタシは、ボウゼンとした表情を浮かべていた。

9度目の結婚生活は、早くも破綻していたのであった。
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