ただ西野くんが好き。




「七瀬先生?」


後ろから声をかけてきたのは同じクラスの


西野 颯。


赤髪でピアスをたくさん開けていて、キリッとした凛とした雰囲気もあるけど、近づきやすい子だと思っている。


佐々木先生情報だと、別の高校の女子が寮に来るくらい結構有名でモテているらしい。



というか、3組の派手な髪色軍団全員モテるらしい。


性格より外見、ってことですか。


確かに、4人はイケメンだと思う。そして結構怖い。


4人とも絶対的オーラを放っている。なのにモテてるから意外と女子って怖いもの知らずなのかな?


まぁそこはスルーとして、ここで派手な髪色の生徒たちを紹介します。


前記にある通り、赤髪の子、西野 颯。



金髪の子、結城 晴翔。
あまり喋らないけど、この3人とは打ち解けているイメージ。金髪でマッシュという意外な組み合わせだけど、カッコいい。
やっぱりイケメンはどんな髪型をしてもカッコいいのかな〜と思う。



青髪の山本 奏。
4人の中で1番怖い。目力があって目が合うだけで恨まれているんじゃないかと最初思ったくらい。山本くんが学校の廊下を歩くだけで周りが静かになってピリピリする。先生でも怖くて授業上手くできなかったこともあると聞いた。でも声は怖くなくて小学4年生の妹を溺愛しているらしい。(これも佐々木先生情報)



紫髪の瀬崎 宏介。
頭もいいらしいけど、陸上の成績もよく、全国大会にも進出したことがある。でもあまり喋らなくて謎の生徒だと私は認識している。










ーーーこの4人は寮でも最上階でスイートルーム的な部屋に住んでいるらしい。



私は寮回りをしている途中に西野くんに話しかけられた。



「どうしたの?西野くん」


「なんでここにいんの」


「なんでって見回りだよ」


そんな不機嫌な声で聞かれるんだろう。男子寮に女性が来るのはマズいのかな…?



でも担当で振り分けられているし、私の他に別の女性教師もこの寮に来ているはずだし、西野くんもこのことは知っているだろう。


もしかして私のことが嫌いだとか…?


新年度早々嫌いだとこれから接しにくい。


「そっか…いつもこの時間帯だった」


「男子寮だから女子が入ることないもんね、ごめんね、私もう終わったから行くね」



西野くんは私がここにいるのが嫌なんだろうと察してすぐエレベーターに乗ろうとした。



ーーー「ちょっと来て」


西野くんは私の右手を強引に引っ張って、部屋に入った。



ここはーーーー


西野くんの部屋。


1人で使うには広すぎる。


部屋に入って西野くんは部屋に鍵をかけて私をリビングにあるソファーに倒す。


「ちょっと……なに!?」


急すぎてなにが起きているか分からない。西野くんは私の上に被さっていて、私の両手を上に上げて強く握られている。


「先生。」


「手離して」


「離しても逃げない?」


西野くんが手を離したらすぐ部屋から出ようと思っていた。でも西野くんは私に逃げて欲しくないのかも。


でも西野くんがなにするか分からないしこういう状況なら逃げるのが普通。


「何もしないなら逃げない……というか部屋から出るよ。けど、私になにしたいの?」


私の率直な気持ちを西野くんに伝えた。



「俺のものになってほしい」








……ん?今なに言った?



俺のものになっ……


これは告白だよね……


西野くんは少しにやけてるし、手は離さないでずっと握ってるからもう痛い。



でもこれは



「嫌だ」


西野くんの顔が強張る。眉毛が下がって怖い顔になる。



でもカッコいい……と心の中で呟く。



「嫌だなんて俺が許さない。俺、七瀬先生のこと好き。」



許さないって亭主関白か!私の方が年上なのに年下に、しかも高校生に!!!振り回されてどうするの!



なんとしてでもこの修羅場を乗り越えないと。



「いきなりやめてくれる?それに生徒と教師が付き合うなんてありえないから」



強い口調で西野くんに言った。これで西野くんも諦めてくれるだろう。



ーーー「生徒と教師でも人間と人間なんだから付き合ってもいいと思うけど?それに1年間内緒にすればいいんでしょ?」



西野 颯……



コイツ、諦めるつもりないな……



私、可愛くないし、スタイルも普通だし、モテないしどこがいいのか全くワカリマセン。



西野くんはずっと私から目を離さない。


もう私に馬乗りになってる体制もキツくなってそう。


「西野くん、まず手離して、逃げないから」


逃げても捕まえられそうだから、逃げずにまずこの話に決着をつけよう。


西野くんは手を離して、私も体を起こしてソファーに2人で座った。


この状況でも側から見れば異様だろうけど。



「俺と付き合って、七瀬先生」


「無理なもんは無理」


「生徒と教師なんて関係ない、それに俺が絶対幸せにするから」


どこから来るんだろうその自信……


顔がカッコいいと自分で自覚してるから?


いやいや、それだけで幸せにできるなんて思わないよね?


「なんで私なの?西野くんなら他の女の子たくさんいるのに」


西野くんは一瞬顔を歪ませて、私に近づく。


すぐキスできそうな距離まで。


「七瀬先生は可愛い。もう学校で有名なんだよ、七瀬先生のこと。他のやつに取られるわけにはいかないの。」


低音ボイスゾクゾクしてしまうじゃん……!!


それに学校で有名って、んなわけない。


結構人数も多いし、まだ着任したばかりだと言うのに。


「私は西野くんのこと生徒としてしか見れないの、まだ仕事残ってるからもう帰るよ」


西野くんから離れてスタスタと帰ろうとしたら、


また私の右手を取る西野くん。


「俺は諦めないし、絶対俺に惚れさせるから、最後にーーー」





ーーーーほっぺにキス。



「唇は付き合ってから深くやるからね?七瀬せんせ?」


もう頭がクラクラしてきた。西野くんに何かを言う力も出ないくらいに。


なんで高校生を相手にこんな言いくるめられなきゃいけないの。
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