今日もキミに甘え放題



まるで時間が止まったかのような感覚に陥る。

唇には柔らかな感触。
視界いっぱいに映るのは悠くんの整った顔。


最初は呆然として。
悠くんが離れて、私の唇を指でなぞる。

そのときようやくキスされたことを理解した私は……。


「……っ、な、んで……」


ぶわっと顔が熱くなった。

あまりな突然のことで状況が飲み込めず、ただ“悠くんにキスされた”という事実だけが脳内をグルグル回る。


「へぇ、さすがにキスならこんな反応するんだな」
「え、あ、なんで……どうして、初めてなのに……」


ファーストキスは好きな人とってよく言われているのに。
まさかその初めてが悠くんになるだなんて。


「だから奪った」
「え……」

「彩葉が誰かのものになるとか、普通に考えて無理」
「悠、くん……?」


鼓動が速まり、全身が熱い。
混乱状態の中で、さらに追い討ちをかけてくる。



「俺が好きになった女は彩葉だけだから」


ショート寸前だった私は思考を放棄してしまい、そのあとの記憶は曖昧だった。


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