陽点  心の中の太陽

慰謝料もいらない。財産分与もない。


それなのに。


思った通り 栄二は 離婚に 応じなかった。


母に言われて 役所の法律相談に行き

私は 弁護士を 紹介してもらっていた。


「ご主人は 自分の悪い所は 直すから 思い直してほしいって。そればっかりで。」


栄二と面談した 弁護士は 呆れた顔で 私に報告した。


「それは 無理だって 強く言いましたから。どうしても 納得してもらえないなら 久美子さんは 裁判をする決意ですって 伝えてきました。」



弁護士から 報告を受けて 私は ため息をつく。



「でも ご主人 裁判って言ったら 少し 引いていたから。案外 大丈夫かもしれないですよ。」


50代半ばの 物静かな 弁護士。


多分 栄二と会って 私の苦労を 理解してくれたのだろう。



私に向ける 同情的な目に 

救われる反面 情けない気持ちにもなる。



よく あんな人と 19年も 一緒にいた。

そう思われていることが 切なかった。



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