バイオレット・ダークルーラー
「水城朱里を待ち伏せしてわざと転んで、捻ったように見せた。そこまでしないと接点持てなかったか?」
「…。りりか、いつも言ってるでしょう?りりかのすべてはすみれなの。すみれの願いを叶えるために生きてるの」
「……おまえなぁ…」
「水城朱里、とっても邪魔」
りりかは憎しみを込めた瞳で
校門まで駆けていく朱里の姿を教室から見下ろした。
「でもねぇりりか分かってるの。彼は必ずすみれを選ぶし、すみれも彼を選ぶ。りりか偉いから今は何もしないの。今後のために接点を持っておこうと思っただけ」
「…時間が無いって分かって言ってんのかよ?」
「もちろん分かってるよ!…分かってるけど…。すみれじゃないと意味ないんだもん…っ」
陽が落ちた瞬間、彼らは動き出す。
…今はそれを待っている時間だ。
校内の人間には、知られることのないように。
「…りりか」
「なによ、」
「おまえの思惑はどうだって良いけどよ」
「っ、」
今夜は曇天。月も星も見えそうにないという。
彼らの生きる時間を見下ろすものは、何も無いのだ。
「…紫月様に危険が及ぶことがあったら、テメェなんざ一瞬で消してやる」
忠誠が蠢く夕陽は、あまりにいびつで不自然なものだった――…。
◇◇◇