バイオレット・ダークルーラー



焦っちゃダメだ。今日は月を見に来たのと、紫月さんに関する情報が少しでも得られたらと思って来たのだから。


きっと彼に会えるのは、店員さんの言った月末。それまでに色々準備をしておかないと。

…とか言いながら、アイロンをかけたアイボリーのワンピースはしっかり手提げ袋に入れて持ってきているわたし。



――…もし会えたら。そんな淡い想いを消せないまま。



大通りを、人の波に乗るようにして歩く。

…わたしここで男2人に絡まれて、紫月さんに助けてもらったんだ。なんて振り返りながら。



お店は今日も紫の旗が立っていた。艶めいた高級感溢れる黒い扉も変わらない。

店員さん、いるかな。…いるよねきっと。



――…カランコロン…



「あ、いらっしゃいませー」

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