バイオレット・ダークルーラー
「っあの、柚葉ちゃんも目覚めたし…誰か来るならわたし、」
「…帰るのは無理な話だ。嬢ちゃんに会うために来るんだから」
「……え?」
「…朱里さん、…あなたは…どこまで知って…っ?」
…ただならぬ雰囲気を察知したわたしは、いない方が良いのではないかと感じて立とうとするけれど
それを制したのは氷雨さんの確かな圧だった。
そしてさっき、わたしにバイオレットレモネードが淹れられたのを見た瞬間から少しずつ余裕をなくしているような柚葉ちゃんは、分かりやすく困惑している。
…どこまで知って、って
多分、いや本当に、わたし何も知らない。
この街で知っていることは、紫月さんの左目がすみれ色なことだけで――…、
――…カツン、カツン。
一歩ずつこちらに近付いてくる足音が聞こえる。
…誰からともなく口を閉ざした空気は、重苦しいもの。
わたしに会いに来るって、誰が――…、
「…待たせてごめんね、氷雨」