バイオレット・ダークルーラー



――…嘘だとは、思えなかった。


最期まで愛すると誓う。

――…愛に飢えているわたしに、その言葉はこの上ない幸せだった。



「紫月さん、」

「…ん」


「…紫月さんが死ぬまでそばにいます。紫月さんがもういいって言うまで、愛し抜きたいです。

――…だから紫月さんも、わたしのこと、愛して…っ」



本当に欲しいものに手を伸ばしたい、

その気持ちを押し殺し目を逸らして生きてきた。

…これからもそうだと思っていた。


嘘でもいい、あなたが欲しいと思ってしまった。



「朱里は本当に、可愛いなぁ…っ」

「…紫月さん…っ」

「夢みたい。でも夢じゃないんだもんね。…なんて言ったらいいんだろう」


「…ふふっ。

――…夢かもしれませんけど、わたしは…それでもいいです…っ」



溢れ出す感情に突き刺さるのは、彼が一瞬目を逸らして右上を見た事実。

…バカなわたしは、たとえ嘘だろうと溺れることを選んだ。




黒にまみれたこの世界で、すみれ色に堕ちた瞬間だった――…。

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