バイオレット・ダークルーラー



「…紫月、あなたの同志は素晴らしい」


「っ!支配人様、知って…っ」


「私がどうしようもないせいで、貴方は産みの親の顔すら分からないまま、可哀想な人生を歩ませることになってしまった。…雨の中家の前に置き去りにされたあなたを、見かねた弟が養子にすると言った時。安堵したものです」


「…そんなことはありません、僕はあなたに…っ」


「本当の父親だと隠したまま、…紫月を傍に置きたいと歪んだことを考えるようになってしまった。けれど貴方は自分でDNA鑑定を頼んでとっくに気付いていた。…まったく、素晴らしい息子だ」


「っ僕は、あなたが目の色を褒めてくれたからここまで生きてくることが出来ました…!…あなたに命を差し出してどんな暴力を振るわれても、あなたがたくさんの命と人生を救っていることを知っているから、」


「…紫月。もういいのです、もう十分だ。私は人を傷つけすぎた」


「支配人様、」


「最期を…あなたの腕の中で迎えられるとは。…分不相応な幸せです」


「っ何を言って、」


「…紫月。幸せになると約束してください。貴方には大切な人がいる、守る街がある」

「…っ…」




「麗蘭街を…っ、絶望から、希望に溢れた街にしてください……。

…私は地獄で、あなたの幸せを願っていますからね…っ!」



――――…

――…

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