こんな溺愛、きいてない!
放課後、遥先輩に強引に連れていかれたのは、うちのマンション、私のお部屋。



我が物顔で私の部屋の扉を開いた遥先輩が、ラブラドールレトリバーのぬいぐるみを手にとった。



「遥先輩、なにをしてるんでしょうか?」



遥先輩がぬいぐるみの首にまかれているバンダナをほどくと、ひらりと一枚の紙がおちた。



「ほら、証拠」



わわっ! 



こんなところに妙な小細工が!



よくよく見てみれば、それは折りたたまれた画用紙。



開いてみると、画用紙いっぱいに手をつないで笑っている私と遥ちゃんが大きく描かれている。



画用紙の下の方には、クレヨンで書かれた一文が並んでいる。



『ずっとずっと、いっしょにいようね。りんか&はるか』



「うわあ、懐かしいっ! これ、幼稚園のときに一緒に書いたよねっ」



「そうそう」



遥先輩は、瞳をキラキラさせておりますが。



「……それで?」



これが、その証拠だなんて言ったら、グーで殴ろう。



ひとの人生なんだと思ってるんだ。



「うら、見てみて」



ひらりと裏をめくると、鉛筆で書かれた可愛いらしい文字が。



『りんかちゃんへ

おとなになったら、むかえにいくから、まっててね。

つぎにあったときに、けっこん、しようね。はるか』



可愛い。ものすごく可愛い。……けど。



「えっと、これは……?」



「俺から凛花へのラブレター。で、約束通り、むかえに来たんだけど。何か、文句でも?」



こんなのもう、ホントにめちゃくちゃ。



それなのに、嬉しくて、うっすらと涙が浮かんできちゃうんだから、私も相当やられてる。



「凛花の返事は?」



遥先輩が、私の顔をのぞきこんだその瞬間、パッと遥先輩の手から画用紙が消えた。



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