こんな溺愛、きいてない!
あれ?

遥先輩が目の前で固まっている。


どうしたんだろ?


「つうかさ、凛花、
メガネしてないと、
めちゃくちゃ、可愛い……」


柔らかい遥先輩の笑顔に、
胸が熱くなる。


そうだった。

昔から遥ちゃんは
一緒に遊ぶたびに
『可愛い、可愛い』って
私のことを褒めてくれたんだ。


でも、もちろん
遥ちゃんのほうが可愛いかったから

ふたりで褒め合って、

キャッキャッと
はしゃいでたんだ。


あー、
あの頃は本当によかった。


あの可愛かった遥ちゃんが、
男だったなんて……


私の心にぽっかりと空いた穴、
どうしてくれる。


「せっかく褒めてやったのに、
なんでそんな怖い顔してるんだよ」


「自分の胸に手をあてて、
よく考えてみて」


「え? 凛花の胸?」


そう言って、
手を伸ばしてきた遥先輩を
全力で睨みつける。


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