こんな溺愛、きいてない!
川沿いのサイクリングロードを
遥先輩と並んで走る。

朝の空気はひやりと頬に冷たくて、
川面に反射して朝陽が弾み、

目に映る光景に
体が内側から澄んでいく。


「この道、気持ちいいな」


「うん」


「凛花は部活、入らないの?」


「ん、入らないよ」


坂道ではお互い口数が少なくなり、

平坦な道が続くと、
ぽつりぽつりと言葉をかわす。


「あ、あれ鴨の親子じゃね?」


「ホントだっ」


徐々に空の青色が濃くなり、
陽が高く上り始めたころには

すっかりと
体も温まっていた。


「このあたり、
秋にはススキが綺麗なんだよ」


「へぇ、毎日走ってんの?」


「ん」


そんなとりとめのない会話が
見慣れた景色を
不思議と色づかせていく。


誰かと一緒に走るのも、
そんなに悪くは
ないかもしれない。


そのとき。


「あれ?」


朝陽とは違う場所から
鋭い光が跳ねた。

< 60 / 288 >

この作品をシェア

pagetop