好きって言えたらいいのに

4


「かさねは?彼氏とはどうなったの?」
 夏葉が同様の話題を私に振ってきた。
「あー…。別れたというか、振られました。」
 居たたまれない気持ちになり、目線を逸らす。
「「またー!?」」
「だって、仕事が忙しくて…帰りが結構遅かったりしてあんまり会えなかったから。」
 声がどんどん小さくなってしまう。
「『お前、俺のこと本当はあんまり好きじゃないんだろう』って…。」
「「はあー。」」
 2人が大げさなくらいのため息をついた。実はこんな理由で振られるの、今回が初めてではないのだ。いつも似たような理由で別れを告げられてしまう。

 こんなことを繰り返して、気がつけばもう27歳。
 …あの頃のヘイちゃんと同い年になってしまった。
「今ならヘイちゃんの気持ち、少しだけわかる気がする。」
 私は、ジョッキを飲み干して、頬杖をつきながら言った。
「仕事とか、夢とか、責任とかさ。自分の色恋ばかり優先させていたら守れないものってたくさんあるんだよね…。」

「かさね…。」
 正太郎が私の頭を撫でてくれたので、私は思わず目を瞑った。正太郎の手は相変わらず気持ちがいい。
「あんたまだ、平志さんのこと引きずっているの?」
 引きずっているのかなあ?
 私はそんな正太郎の問いかけを反芻して、心の奥で答えを探した。

「どうだろう?10年も追いかけていたのに、ちゃんと終わらせられなかったから、変な拗らせ方をしているのかも。」
 空のジョッキを指で弾いて、
「好きというか、やっぱりすごいと思うし…あこがれはある。でももう違う世界の人だから。」
私は自分に言い聞かせるように、そう答えた。

「全然連絡はないの?」
 夏葉がピーチフィズを口に咥えて私を見上げる。上目遣いに見えて、なんだかとてもかわいらしかった。旦那さんから愛されているんだろうなあと、全然違うことをぼんやりと考えてしまった。

「…連絡なんてないよ。もうきっと、私のことなんて忘れているんじゃないかな?」
 自分で言っていて、なんだかちょっと心が痛んだ。

「そっかー…。」
 正太郎が一度伸びをして、もう一度私の頭を撫でてくれた。

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