好きって言えたらいいのに

7


「キャベツ、お父さんに聞いてみるね。」
 放課後、夏葉とともに下校しながら私はお父さんにメールを打っていた。
「ありがとー!本当にさあ、B組のやつら。うちが『焼きそば』をやるの知っていて『たこ焼き』を選んでくるとはさあ、正面切ってケンカ売られたようなもんだよね。」

 お父さんは未だにガラケー。久しぶりのメール画面と睨めっこをしながら文章を送る。
 だから私は気がついていなかなかった。
 夏葉が急に足を止めて、前を睨み上げていたことに。

「陣野さんって君?」
「俺たち、B組の者なんだけど。」
 スマホ画面から顔を上げるとそこには男子が2人が立っていた。1人は短髪、1人は眼鏡。
「…げっ、石川~。」
 夏葉がとても嫌そうな声を出した。
「お前に用はないの。俺らは陣野さんに用があんの。」
 石川と呼ばれた短髪の男子が、夏葉を手でひらひらと払い、私に笑顔を向ける。

「えっと、初めまして、陣野さん。ごめん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど。」
 もう一人の、眼鏡男子がこちらを見る。
「文化祭の模擬店に使う野菜…キャベツなんだけど、陣野さんちの店で安く購入できないかな?」

 朝も似たような言葉を聞いたなあと呆けていると、隣りで夏葉が舌打ちをしたのが聞こえた。


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