星降る夜、君ともう一度
列車はついに裏山に到着してしまった。もう嬉しすぎるこの奇跡の時間も終わる。次の夏までもう巡り会うことはできない。

「あっちゃん」

「ちぃちゃん」

列車が止まり、あとは智月が降りるだけだ。智月が降りてしまえば列車は動き出し、天国へとまた戻っていく。

二人は固く手をつなぎ、一秒でも長くいられるようにゆっくりドアへと向かって歩いた。ドクドクと互いの鼓動が音を立てる。泣いてはいけないと智月は強く唇を噛み締めた。

「ちぃちゃん、来年はもっとすごいお菓子が作れるように頑張るね」

朝日がニコリと笑う。その目からは今にも涙がこぼれ落ちそうになっていた。智月は勇気を振り絞って朝日を抱き締める。その体はやはり温かい。鼓動もしっかり聞こえていた。

「僕も、勉強とか頑張るよ。次の夏を楽しみにしてる」

互いに見つめ合い、ゆっくりとつないでいた手を離す。その刹那、ドアがゆっくりと閉じられた。空の彼方へと列車は消えていく。

一年に一度しかない夏の夜、列車が見えなくなってから智月は叶わない恋に蓋をすることに泣き崩れた。
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