夏祭りが終わるまで、この花火が終わるまで
鳥居をくぐってしばらくしてから、花日が僕に向かって無邪気に笑いながら言う。花日はこのお祭りが妖のものだなんて知らない。それでも、楽しみにしてくれることが嬉しい。

「そっか。なら、りんご飴を奢ってあげる」

「本当!?やった〜!!」

僕は微笑み、花日の頭を撫でる。花日はまるで幼い子どものようにはしゃいだ。そんなところも可愛い。

「りんご飴二つください」

りんご飴を売っている猫又(花日には人間に見えている)に注文し、お金を払う。まるで宝石みたいに艶がかかったおいしそうな飴を二本受け取った。

「はい」

「ありがとう!」

僕がりんご飴を渡した刹那、花日は目を輝かせながらりんご飴に口をつける。おいしい、と小さく何度も呟くその姿に僕は見とれていた。

人間は歳を重ねるごとに、表情などが乏しくなる人もいる。女の子は男の子の前では可愛い顔を作るのに必死になる子もいる。でも、花日は僕の前では自然体でいてくれて、無邪気に笑ってくれる。それが花日の一番の魅力なんだ。
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