女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「アキ?」

 遥自身が動きを封じようとしていたくせに、なにも起こらない現状に不安げな声を上げる。
 上目遣いで覗き込まれ、胸がドクンと音を立てた。

「晶って呼ばないのか」

 意地悪な声色でそう聞くと、遥は顔を真っ赤にしてあたふたしている。

「起きていたなんて。悪趣味です」

「人の寝顔を盗み見ている方が悪趣味だろ」

 隙をついて唇をかすめとると、遥は頬をむくれさせた。

「誤魔化そうとして」

「誤魔化してない」

「だって」

 顎に手を添え顔を持ち上げてキスをすると、目を見開いた遥が戸惑っているようで、揺れる瞳を向ける。

「遥」

 甘い囁くような呼びかけは、全身の毛が逆立ったような気がした。

「お前に呼ばれるのなら、晶でもいい」

 そこまで言って、晶は訂正した。

「いや、お前にこそ晶と呼んでほしい」

 甘い囁きと同じような甘いキスをして、頭がぼんやりしてくる。
 優しく、それでいて妖しい晶の触れ方に身を委ね、シーツの波間に体を預けた。
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