女嫌いと男性恐怖症:付き合いの手順

「キスマークっていうのは、男女が付け合うもので、相手への独占欲の現れらしい」

「独占欲?」

 晶は遥の赤くなった肌を指し、説明を続けた。

「唇を押し付けて、肌を吸うんだ。それで内出血させる」

「なんだか物騒ですね。それが独占欲?」

 ほんのり赤くなった肌を見て、チリチリとした感触を思い出す。

「そういうところにキスできる間柄だって、誇示しているって言えばいいのか。自分のものだっていう、言わばマーキングだな」

「マーキング。したら、どうなるんですか?」

「ハルも、俺に付けたらいい。この辺りに付ければ、普段は見られない。それを見られて困るような状況にはならないって、証明にはならないか」

 語尾が自信をなくして行った、晶のシャツの裾をそっとつかむ。

「よくわからないですけど、やってみたいです」

 鎖骨の辺りにそっと触れると、晶がピクリと体を揺らした。

「嫌、ですか?」

「いや、くすぐったいというか、変な感じだ」

 遥に肌に触れられるという事実が、こんなにも欲情を煽るとは思わなかった。
 小さな唇が肌に触れ、懸命に痕を付けようとする感触が、晶の呼吸を浅くさせた。
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