これを恋だと認めたら、
教室の引き戸を開けて入って来た担任の熊ちゃん先生。の後ろにすらっとした男子の姿。


彼が黒板を背に立った時、教室の騒めきは最高潮に達した。私も勢いよく斜め後ろを振り返る。


「絶対有り得ないって言ってたりおさん!あれはイケメンじゃないんですか!」


「…イケメン、だね。」


渋々私の意見に賛同するりおを見て、してやったりという顔になる私。
そんな皆の騒めきを熊ちゃん先生が咳払いで鎮める。


「えー、お前らもう分かってるだろうが、こいつが今日からこのクラスの一員になる中野真澄だ。親の都合での転校らしい。」


そう言って中野真澄くんに頭を下げさせる先生。そして彼の席を探している。


きっと、きっと私の隣だ。


「じゃあ中野真澄は中野紫苑と野田の間の席な、お前ら一席づつずれろ。」


ほら、やっぱり!イケメン転校生の隣という貴重な席を得た私は、よろしくという意味を込めつつ教卓の前にいる彼の手を振った。
ぺこり、会釈してくれた彼はやっぱりイケメンだった。


「好きになっちゃうんじゃない?イケメンが隣の席とか。」


一席ずれたことによって後ろの席になったりおが茶化してくる。


「やめてよ、変に意識しちゃうからそういうの!私は友達にになりたいの!」


少し食い気味に言ったからかふふっと笑われた。少しむっとしてりおを睨み返すもまた笑われる。


りおはいつでも大人びてるなあ。バレー部の副主将を任されるのも納得だ。


そんな事をしているうちに隣にやってきていた彼は、身長170以上の細身で、どこかの雑誌に載っていそうな顔をしていた。


「私中野紫苑です、よろしく!」


彼を見上げてそう元気よく挨拶した私は20cmくらい頭上から鋭い視線を向けられる。なんだか少し品定めされている様な視線に少し笑顔が引き攣った。


「うん。」
返してくれたその一言に、友達への第一段階成功だ!と先程の違和感を振り払い、喜ぶのだった。

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