死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
「本当にそれでいいの? まさか、亜月君にも言わない気?」
 亜月……? あ、あづのことか。あづきであづね。
「……あいつは、友達でもなんでもないので」
 首を振って俺は言った。
「赤羽くん、少しでも友達だと思ってないと、そんな言葉はでないよ? 少しは素直になったら?」
「……じゃあどうしたらいいんですか。心配されたくないんです。これ以上世話やかれたくないんですよ」
 先生は口をつぐんだ。
「とにかく、アイツらにも親戚にも言わないでください。お願いします」
 上半身をベッドから起こし、頭を下げた。
「……わかったわ。それを赤羽くんが望むなら、そうする」
 俺の頭を撫でて、先生は笑った。
「ありがとうごさいます」
「うん。でも、本当にいいの? 何もかも話さなくて」
「……いいです。後先生、歩けるようになったらどっかの病院に移ってもいいですか。できれば日本じゃなくて海外の病院に」
「それはいいけど、どうして? まさか、何も言わずにいなくなるつもり?」
「……そうです。きっと捨てられないと思いますけど」
 捨てられないなら何も言わずにいなくなるしかない。
 俺にあいつらと一緒にいる資格はない。死ぬのに一緒にいるなんてダメだ。
「だったらここにいればいいじゃない!」
 先生は声を荒げた。
「それじゃダメなんです。あいつには俺が死んだのを引きずって欲しくないんです」
「……わかったわ。でも、よく考えな。手術のことも、病気のことを話すかどうかも、転院するかどうかも。ね?」
 先生から顔を逸らし、口をつぐむ。
「わかった?」
 俺の顔を覗きこんで、先生は言う。
「……はい」
「ん。じゃあ後でカメラをつけに看護師とかが来ると思うからよろしくね。その時に朝食も持って行かせるから。じゃあ、またね」
 そういい、先生は病室を去ろうとした。
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