死にたがりの僕が、生きたいと思うまで。
 女っぽい名前と容姿だからって恐ろしすぎる脅しだ。質が悪い。
「「「「はーけ!はーけ!」」」
 俺と佐藤の周りを取り囲んでいた男達が、一斉に声をあげた。草加の取り巻きだ。ざっと五人くらいはいる。
「痛っ?」
 取り巻きのうちの一人が、左手で俺のズボンを引っ張る。もう片方の手でベルトを外し、ニィっと悪魔のような笑みを零した。
「アハハ!! おい蘭、流石にそれはひでぇんじゃねぇの?」
 草加が声を上げて笑った。哀れみに満ちたような、ひどい笑い方だ。
「だってこれじゃあ、拉致が明かねぇだろ。お前らも手伝えよ。逃げらねぇよう、足でも踏んどけ」
「痛っ!!」
 両足を掴まれ上履きを脱がされる。靴下の上から、足にカッターを刺された。踏むのと痛みが雲泥の差だ。
 羞恥心と辛さと痛みでどうにかなりそうだ。思わず涙が零れる。
「うわっ、こいつ泣いてんだけど。まじ女子なんじゃねぇの?」
「草加、それじゃあ女はみんな泣き虫だと思ってるみたいに聞こえるぞ」
 蘭が呆れたように言う。
「えー泣き虫っしょ。佐藤だってたかがスカートで泣いてるし」
 お前らの基準が狂っていると毒づきたくなった。
 ズボン脱がされそうになって泣くなって、大抵の男が無理だろ。スカートもそうだ。ノリでされたにしたって辛い。酷いにも程がある。
「草加、カッター抜け。ズボン脱がす」
 足首まで刷り降ろされた俺のズボンを見ながら、蘭は言う。
「はいはい」
「痛っ!!」
 抜かれた二本のカッターから、血がポタポタと垂れていた。床も俺の血でかなり赤く染まっている。
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