イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
11. 波紋

『オレはまだ15分くらいあるかな。今朝はクライアントに直行だし。美弥子は?』
「いいなぁー、わたしはもう出ないと」

携帯に向かって答えつつ、キッチンが片付いてることをバタバタと確認。
ふと、窓際の愛らしいグリーンが目に入り、緩んだ微笑をマフラーへ埋める。

ジョウロ型のブリキポットに入ったアイビーは、先週届いた、坂田くんからのプレゼントだ。

「ねえ、アイビーのお礼、何がいい?」
『だから何もいらねえって。ただ、オレの気持ちっていうか……』
「え? 何?」
『いや、お前の部屋に合いそうだなって、気が付いたら買ってただけ。気にしなくていいから』
「うん……坂田くんがそう言うなら……ありがとう」

仕方ない、また手料理でも、と考えながら。
玄関ドアを施錠して外へ出ると、吐く息がもう白かった。

「うわ、さっむいよ、今日!」
『まぁ暖冬とはいえ、もう12月だからな』

坂田くんの方は支度をしながら話してるのか、携帯からは声以外のガサゴソって音が混じってる。

エレベーターの方へ行きかけたけど。
通話が切れちゃうリスクを考え、外階段へ変更した。
風の冷たさに季節の移り変わりを実感しながら、リズミカルに降りていく。


「冬と言えばさ、あの、ね、今度スケート行かない? そろそろ期間限定のリンク、いろいろできてるでしょ?」

通りに出て、同じく駅へ向かう人たちに交じりながら聞いてみる。

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