イケメン同期から全力で逃げてますが、逃げ切れる気がしません!
エピローグ


「っぅ……、ぇっ……く、……」


泣きじゃくりながら坂田くんに手を引かれ。
ロビーを横切って……、一緒に無人のエレベーターに乗り込んだ。

ピカピカに磨かれた壁面に自分の泣き顔が映り込んでいて、ようやく羞恥心が戻ってくる。

繋がれていない方の手で涙をぬぐい。
黙り込んでしまった坂田くんを見上げた。

これからどこに行くんだろう?

「えっと……もう帰る? それなら、クロークから荷物を……」

取ってこなくちゃ、と言いかけて、口を噤んだ。

彼が胸ポケットから取り出したカードを操作パネルにかざし、かなり高層階のボタンを押したからだ。

音もなく、エレベーターが指示通りに動き出す。

ガラス越しに見える六本木の景色が、最初はゆっくり、それから加速度的に変化して。
わたしたちの身体を上へ押し上げていく。

「さかたく……」

この先にあるのは……
その場所に向かうことの意味を理解して、急に喉の渇きを覚え、こくっと唾を飲み込んだ。

「返事はもらったし、これ以上の我慢は無理。いい加減、限界だ」

低く抑えた声の端々に彼の想いが滲んでいるようで、ドクリと鼓動が妖しく脈打ち始めた。

「今夜このまま、全部もらうから――いいな?」

「っ……」

ひたと見つめられて、あっという間に浅くなっていく呼吸。
火照っていく身体が恥ずかしい。
まるで期待してるみたいで……いや、してるんだけど。

真っ赤に違いない顔をうつむけて、わたしは言葉もなく、小さくこくんと頷いた。

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