漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~




 「千絃の考えてる事………わからないよ」
 「え………」


 気づくと響の口からそんな言葉が発せられていた。自分の声で、それに気づいたけれどもう止める事が出来なかった。
 今まで我慢してきた感情が、溢れ出て暴走ひてしまう。


 「約束破って目の前からいなくなったくせに、突然目の前に現れるし、優しくしたり、ジャスミンティー好きなの覚えてくれたり。私の事褒めたり、昔みたいに笑ったり………怪我を心配してくれたり。それなのに、いじわるまでしてきて私の事からかうし。………千絃は私を嫌いなら優しないでよ。仕事なんて誘わないで………キスなんて、しないでよ………!」


 思いつく限りの事を千絃にぶつけ、最後は悲痛な叫びに近かったかもしれない。泣きそうになりながら彼を見つめる。
 千絃は少し目を大きくしながら、響を見ていたけれど表情は真剣なものだった。

 響は言い終わると、視線を逸らした。ただ気持ちを伝えただけなのに、息が上がったようにはーはーっと早い呼吸になっている。それを隠すように顔を背けて包帯がついた腕を掴む。ジンジンとする痛みが少し強くなった。




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