漣響は強くない ~俺様幼馴染みと忘れられた約束~




 「………医者に行ったら怒られたよ。なんでもっと早く通院しなかったのか。練習を止めなかったのかってね。そして、その時に治療をしないと治らないかもしれない。治療をしても完治はしないかもしれない、って」
 「………っっ………」
 「だから、俺は稽古を続ける事を選んだ。痛み止を貰って普段通りにしていたんだ。この時だけでも、3年の全国大会だけでも響と出たかった。………俺が優勝すれば強くなれる、響を不安から守れるんじゃないかって思ってたんだ。けど、怪我に気づいたの顧問だったよ。そして、もちろん進学先の大学にも怪我の事も言わなければいけない。……2年の時からオファーはあったけど、怪我をしたことを伝えたそれも白紙になったんだ」
 「……………」


 想像もしていなかった辛い彼の過去に、響は言葉が出なかった。
 そして、そんな事にも気づかなかった過去の響、自分の事でいっぱいいっぱいになり、彼を追い詰めてしまっていた事に愕然としてしまった。
 けれど、目の前の千絃は響を責める事なく、むしろ響が流した涙を指で拭いながら「なんで泣いてるんだよ」と、優しく微笑んでくれている。昔と変わらない、響を見つめる柔らかな瞳だ。

 
 「さすがに響と同じ大学に行けないこととか、予想していた未来がなくなってしまった事はショックだったよ。それに響との約束も守れなくなってしまった。ずっとずっと悩んで。そして、今剣道をやめるべきなのか……」
 「ごめんなさい………千絃……」
 「響?どうした?」


 そこまで話を聞き、もう耐えられなくなってしまい響は口を開いた。
 



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