心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵

翌日 朝は その日の予定を 伝え合い。

夜 仕事の後で 田辺さんは 電話をくれた。


「明日の朝 9時頃に 迎えにいくね。」

「ありがとう。どこに行くの?」

「秘密。なーんてね。」

「えー。田辺さん ずるい。 教えてよ。」

田辺さんの 砕けた口調に 私も 甘く応えてしまう。


「あのさぁ。もう 田辺さんって呼ぶなよ。」

「えっ。でも。何て呼べばいいの?」

「名前で呼んでほしいなぁ。」

「名前?純也さん…何か 恥ずかしい。」

「うん。くすぐったいね。呼び捨てでいいよ?」

「純也…?いきなり 呼び捨ては 難しいな。純ちゃん…純ちゃんは?」

「うへっ。もっと くすぐったいよ。ゾクゾクしちゃう。」

「純ちゃん。純ちゃん…純ちゃん?」


私は 純也の名前を 何度も呼ぶ。


「こらっ。まりえ。明日 罰ゲームだよ?」

初めて 呼び捨てされた名前は 妙に甘くて。


「何か 会いたくなっちゃった…」

「うん。俺も。一っ走り 行こうかな。まりえの家まで。」

「ホントに?」

「うん。明日休みだし。」


30分後 本当に 純也は 私の家まで 会いに来た。





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