心を ほどいて  ~コーディネーター麻里絵
12

8月に入って 最初の土曜日

私達の街で 花火大会が 行われる。


私達は デートを重ねていたけど。

純也は キスから先を 求めてこない。


「あのね 純也。花火大会 行かない?」

私は 祐一君との思い出に 挑む覚悟を決めていた。

「まりえ。人混み 大丈夫?」

純也は 察していたかもしれない。

「うん。純也と一緒だから。久しぶりに 花火 見ようかなって思って。」

「いいね。いい場所 探しておくよ。」



祐一君と行った 2度の花火大会。


最初は 付き合い始めたばかりで。

2人とも ぎこちなくて。


手を繋いで 人混みを歩くだけで ドキドキした。


次の年は 別れる直前で。

すぐ先の 悲しい出来事も知らずに 幸せだった2人。


熱いアスファルト 火薬の匂い 

花火の音 夜空を染める色彩…


全部が 悲しみを 呼び起こすから。


あれ以来 どこの花火大会にも 行けなかった。


でも 純也と一緒に 花火を見れたら。

私は また一つ 先へ進める。






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