男心と春の空
春四月
春四月。
樋川と野山と俺は無事二年になった。

二年になって初めての学食。

「お前らさー、もう少し自分たちの専門性とか考えて決めた方がいいよ。」

野山がこぼす面倒くさい文句を、樋川も俺も聞き流しながら授業を決めていたときだ。

「はまちゃん」

聞き慣れた声に名前を呼ばれて、俺は勢いよく頭を上げた。

すぐ目の前に、さっそく出来たと思われる三人の友達を連れたアキナが立ち止まっていた。

「おお、アキナじゃん。」

アキナは歯を見せて笑う。

前まで目立っていた八重歯が目立たなくなっている。
歯を矯正したようだ。

「受かったよ。」
「どこ?」
「政経。」

少しやましい気持ちと、素直に嬉しい気持ちがこみ上げてくる。

「おー、おめでとう。」

俺はなるべく友達の距離感を意識して返す。

後ろの(そんなに可愛くない)友達の子たちがペコペコと会釈してきた。
樋川が得意の営業スマイルで返す。

女の子たち、ちょっと嬉しそうだ。

「じゃあ、また。」

アキナが軽く手をふる。

「おお。」

俺も手をふる。

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