男心と春の空
最後の図書館
次の日も樋川や野山と学食で飯食った後、別れて図書館に一人向かう。

小雨が朝からずっと続いてるけど、傘を差すほどでもない。

いつになったら梅雨が明けるんだろうか。

図書館はテスト勉強をする学生でいつもより多かった。
ほとんどの机が埋まってる。

ウロウロと空いてる席を探すけど、構造的に空席をすごく見つけにくい。
3階に行くとただ長机が並ぶだけの自習室もあるけど、仕切りがないと集中できなくて俺は好きじゃなかった。

狭い通路をズンズン歩き進める。

普段は全然足を踏み入れない郷土資料のところで、やっと空席が目に入る。

相席になるけど、テーブル自体が大きめの作りだからそんなに気にならない。

そうテーブルの前まで来た時、その向かいに座っていた人が顔を上げた。

「あ」

声が重なった。

アキナだ。

「はまちゃんじゃん。あれから大丈夫だった?」

少し申し訳なさそうに聞いてきた。

「うん、まあまあ」

俺は適当に流す。

アキナは「そっか」と小さく独り言のように呟いてから「座りなよ」と言ってきた。

アキナがまとめてるノートを見る。

「その先生神だから、最後の授業で出すとこ全部教えてくれるし、本当にそれしか出ないよ。」

すげーお節介。
つい言ってしまった。

「ホントに?えー、今日かなり頑張ってノートまとめてたのに。」

アキナが落ち込むような、笑うような、曖昧な顔をする。
そしてニコッと目を笑わせて俺を見た。

「よかった、はまちゃんがいて。」

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