砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
「無理だった。
アベルは私の体の全てを知った。私自身が知らないところまで…私も、男と女の体の違いを思い知った」

カインの言葉に、モレーもモリセットも二人の間に何が起きたかを察した。

「なんて……なんて、ことでしょう。大切にお育てしてきたカルヴィン様が…」

モレーの頬が涙に濡れる。

「モレー、泣くな。嫁ぐ前の娘でもあるまいし、こんな厄介な体、別にどうでも構わない。
そんなことより、これからのオルディン家のことを考えなければ。
アベルを信用していないわけではないが、秘密を知る人間が増えればそれだけ危険も増える。
サラに良縁を早く見つけてくれ。姉上達が一日も早く男子を、産んでくれるよう祈ろう」

「カルヴィン様…」

モリセットも、泣き濡れるモレーの肩を抱きながら顔を歪ませている。

「モリセット、明日より城でアベルにお仕えする。支度を頼む」
「…かしこまりました。どうぞ、お気をつけて」
「あぁ」





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