幸せにしたいのは君だけ
一見勝気で強気なのに、本当は誰よりも繊細で思慮深い。

流行りの服装という鎧を着て、自分の弱さを必死に隠している。


その姿に気づいた時にはただ、守りたいと思った。

彼女を傷つけるすべてのものを排除したいと願った。


それは幼馴染みに抱く感情よりもずっと強いもので。

これまで俺が抱いたことのない感情。

でもこの気持ちの正体がわからなかった。


理解できたのは、このまま佳奈との縁を切ってはいけないという直感だけ。

無理やりといっていいほどの強引さで繊細な彼女の心に踏み込んだ途端、怒らせてしまった。

俺に対してむき出しの感情を見せる女性なんて、澪くらいだったのに。


感情とともに紅潮する頬と瞬時に変わる表情から、目が離せなかった。


――独り占めしたい。

湧き上がってきたのは信じられないくらいの独占欲。

これまで、どんな異性に対しても抱いた記憶のない感情。


――触れたい。

思わず触れた頬は温かくて、もっとと心が願ってやまなかった。


怒らせて逃げられた佳奈に、どうやって接触しようかと考えていた耳に飛びこんできたのは、彼女が合コンに行くというとんでもない情報。

佳奈を誘ったという友人を睨みつけたくなったのは言うまでもない。


――彼女を俺以外の男に渡すつもりはない。
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