幸せにしたいのは君だけ
電話の向こう側で圭太さんが噴き出す声が聞こえた。


「な、なに?」

『いや、ごめん。焦る佳奈が可愛くてさ』

「か、可愛くなんか……!」

『いや、可愛いよ。急いで結論を出さなくていいから。さっきも言ったけど、一旦は実家に戻るつもりだし。佳奈が了承してくれるなら、ふたりで暮らせる物件を一緒に探したい』

「あ、うん……」

『まあ、断られても諦めないけど』


挑戦的ともとれる言い方に、鼓動が早くなる。


『佳奈に関しては絶対にひかないから、覚悟してて』


聞こえてきた言葉に耳が熱を持つ。


「ええと、ふたりで暮らすのが嫌なわけじゃないから。その、両親に説明をしなきゃいけないし……」


しどろもどろになって返答すると、当たり前のように言われた。


『もちろん、佳奈のご両親には、正式にご挨拶に伺うつもりだよ』

「ええっ!!」

『なんで驚くんだよ、当然だろ? 大事なお嬢さんと住まわせてもらうんだ。きちんと許可をいただくべきだ。何事も最初が肝心だから』

「そ、そうなの……?」


もう様々な出来事に頭がうまく働かない。


「で、でも同棲、とかになったら親はその、結婚するつもりかとか根掘り葉掘り聞いてくると思う。だから……」
< 116 / 210 >

この作品をシェア

pagetop