幸せにしたいのは君だけ
「それだけ囲い込まれて、猛烈にアピールされてるのに、なにが不安なの? 私ならきっと完全に恋に落ちてるわよ」

「でも、出会ったばかりだよ?」

「正確にはずいぶん前から知ってるんじゃなかった? 先輩の幼馴染みなんでしょ?」

「それでも今みたいに話したり、出かけたりはしていないもの」

「そうは言っても、勤務先も自宅も人となりも一応きちんと知ってるわけでしょ。素性の知れない人でもないじゃない」


なにが問題なのよと言わんばかりの態度を示す親友。


「それだけじゃなくて、私、遠距離恋愛も向いてないし、あんなに仕事もできて容姿も完璧な人の隣に並ぶ自信、ない」

「遠距離恋愛は……そうねえ。佳奈、好きな人とはずっと一緒にいたい可愛いタイプだから。性格はさっぱりしてるのに、そこは見た目通りよね」

「やっぱり重い?」

「それを決めるのは私じゃなくて、佐久間さんでしょ。相手を本気で好きなら普通じゃない? 私だったらついていくとか言うわよ」


恋愛には貪欲な親友が付け加える。


「でも仕事だから、こればっかりは仕方ないでしょ」


ちなみに彼は今日の夜、再びアメリカに戻る予定だ。

次に帰国するのはいつになるのかわからないし、尋ねていない。


「佐久間さんがアメリカに赴任したのって、昨年の夏って言ってたわよね? 大体、九重の海外赴任期間って二年くらいだから……」

「後、半年以上はアメリカなんだと思う」

「半年かあ……耐えられる?」


彼女の質問に、どう返事をすればいいかわからない。
< 78 / 210 >

この作品をシェア

pagetop