紡ぐべき糸

美咲と 話していると 聡は 許され、包まれていくような 不思議な気持ちになった。
 


美咲のまわりにいた 女子達は 別の友人を 取り囲んで 移動していた。


聡と美咲は 二人きりで 話し続ける。
 

「本城、就職も 東京でするの?」

聡が聞くと 美咲は 少し首を傾げ、
 

「うーん。戻って来て こっちに 就職あるかな。」

と聡を見て言う。


「本城の大学なら どこでも 入れるよ。」

聡は 少し拗ねたように言う。


美咲は また優しく笑って、
 

「やっぱり 東京かな。これから 少しずつ 就活始めるわ。」

と言った。


聡の体を 強い欲望が 駆け抜ける。

美咲を 抱きたいと 強く思いながら、
 

「本城 二人で 抜けちゃおうか。」

とふいに 言ってしまう。
 
「えっ。」

と言って 美咲は 目を見開く。
 

「俺 先に出て 車の中にいるから。少ししたら 本城も来いよ。」

身をかがめて 美咲の耳元で 聡は言う。

美咲は フッと笑って 聡を見つめた。
 

「ねっ。」


と聡が 念を押すと 美咲は 微かに頷いた。
 
 


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