紡ぐべき糸

4


「ねえ。横山君 どこへ 連れて行ってくれるの。」

聡の返事を 待たずに 美咲は 明るく言う。

そっと 車を 発進させながら 聡は 何も 考えていなかったことに気付く。
 

「少し ドライブしよう。海でも行こうよ。」

と聡が言うと 美咲は ケラケラ笑いながら、
 

「海?こんなに 寒いのに。しかも夜だよ。」

と言った。


美咲の 笑った顔は 少し幼くなって 聡を ホッとさせる。
 

「この辺 夜 開いている店って 無いんだよ。ファミレスくらいしか。」

聡が 苦笑して言うと 美咲は さっきの優しい笑顔で
 

「知っているわ。私も ここで 育ったんだもの。」


と答えた。


「そうだよな。何か 本城 変わったから。勘違いしちゃうよ。」




聡は 都会の女の子に 地元を 案内するような 錯覚をしていた。
 



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