紡ぐべき糸

26


指輪を受取った 喜びとは裏腹に 啓子は 大きな不安を 抱えていた。


その月の 生理が 遅れていたから。


聡が 両親に会う前に 啓子は 聡に 伝えなければいけないと思う。
 

「あのね 聡。私 今月まだ 生理が来ないの。」

思い切って 啓子は言う。


贈られた指輪に触れて 甘い不安に 打ち勝つように。
 

「本当に?ケイ、調べてみた?」

聡の目は 明るく輝く。

もし 聡に否定されたらと 思っていた啓子は 安堵に 胸を撫で下ろし 
 

「まだだけど。」

と口ごもる。
 
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