紡ぐべき糸

不安になる時間も 引き返す選択肢もない現実は 啓子に 覚悟を決めさせて 立ち向かう勇気を 与えていた。


これから お互いの両親に話すことや 会社に報告することなど。


不安で いっぱいだけど。


もう 逃げ出すことは できないから。



翌日 夕食の時に
 

「あのね。私 結婚するから。それで 土曜に 相手の人を 紹介したいんだけど。」

と両親に言う。

父と母は 一瞬 無言で 見つめ合う。
 

「そうか。」

と父が言い、
 
「どんな人なの。」

と母が言う。


最近の 啓子の様子で 両親は 多分 気付いていた。


二人とも あまり 驚いていない。
 


「同じ会社の 同期の人。横山さんって言うの。」


啓子は 少し照れて答える。
 

「ちゃんとした人 なんだろう?」

父は 啓子の顔を見る。
 

「うん。仕事ができて 優しい人だよ。ずっと一緒に 働いているから。お互い 良く知っているし。大丈夫だよ。」

啓子が言うと 父は笑顔で頷く。



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