嘘つきは恋人のはじまり。
あなた誰ですか2

薔薇の花束の意味





『そもそも、どうしてわたしなんですかっ!九条社長ならもっと他に…っ!』


顔よし、スタイルよし、経済力あり。
性格はちょっとオカシイ?というかだいぶ危ない人かもしれないけど、仕事に対する姿勢は問題ない。つまり、根は良い人だと思う。


『俺は玲がいい』


『会ったばかりなのにそんなこと』


『いや、俺たちは一度会ってる』


その言葉にパッと顔を上げる。九条さんはなぜか悲しそうにわたしを見つめた。


『……あの日からずっときみを忘れられなかった。けど、きみは俺のことなんかスッカリ忘れているみたいだな』


九条さんはそろりとわたしの頬を撫でる。まるで“思い出せ”と言われているようで、わたしは言われるがまま、再度記憶を追いかけた。


『…いつですか?』


ここでさっきのように人違いだ、とは言える雰囲気じゃなかった。九条さんは記憶力に自信がある、という。わたしだって物覚えは悪い方じゃないけど、今ここで彼の意見を否定するのは違う。


『教えない』


それなのに九条さんはフンと顔を顰める。思わず「は?」と言いそうになったけど、その言葉は喉の奥に追いやられた。


ーーー⁉︎



『…少しぐらい思い出す努力をしろ』



男は少し屈むとわたしの唇に自分の唇を押しつけた。まるでそれ以上喋るな、と言われているような少し雑なもの。キスというより本当にただ塞いだ、という表現の方がしっくりくる。


『俺でいっぱいになればいい』


難癖つけられておまけにキスされて怒りたいのはこっちの方なのに。九条さんは若干の拗ね気味で不機嫌になり、それを隠すこともなくコートを羽織ると鞄を持ち、わたしの鞄を人質ならぬ鞄質としてさっさと部屋を出て行ってしまった。


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