嘘つきは恋人のはじまり。
「……お邪魔します」
「どうぞ」
九条さん家で作ろうと思っていたけど、フライパン1つ、それも小さいものしかないという。というわけで、仕方なくわたしの家に招くことになった。予め九条さん家の事情を聞いておくべきだった、と反省した。
「ソファーにでも座っていてください。テレビもどうぞご自由に」
買ってきた食材を冷蔵庫に入れると、まずお米をいつもより多めにセットした。白飯に合うもの、と考えてメインディッシュは豚肉の甘酢餡かけにする。
黒酢は身体にもいいしね。
あとは、鶏団子と鮭の雪見スープと……。
「なにか手伝う?」
九条さんがひょっこりとキッチンに顔を覗かせた。ジッとできなかったらしい。なんだか子どもみたいだ。
「大根おろし摺ってもらえますか?」
ピーラーで皮を剥いた大根と摺り下ろし器を渡した。九条さんは受け取るとリビングのテーブルで摺り下ろし始めた。
ジュッジュッジュッ、と大根が摺り下ろされていく。それを確認しながらメインディッシュにとりかかった。