恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
therapy9


「砂川君…本当に良いの?」

砂川君に連れられクリニックを訪れ、沙和はショルダーバックを両手に抱えながらその扉を潜った。

「相澤に何かあってからじゃ遅いから」

そう言って砂川君が真っ暗だったクリニックの明かりをカチカチとつけていく。

私と砂川君以外誰もいないクリニックは何だか、いつも午前中に訪れているそことはまるで違うような空間だと思った。


「相澤、こっち」
「あ、はい…っ」

砂川君に手招きをされ、その後をついていく。いつも診察室へ行くのではない別の道を行き、入院用の病室だという個室に案内された。

「すごい、広い」

想像よりも広々としたその部屋に思わず目を丸くした。

ベッドにローテブルに、小さな洗面台、いくつかの文庫本が並べられた本棚、小さなコンロと台まである。

「奥の扉空けたらシャワールームだから。使いたい時に自由に使って」

砂川君が部屋には入らず、開いた扉の前に立ったままそう言って優しく笑う。
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