恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

相澤沙和side





『よかった。これで、やっとお互い苦しみから解放されるんだ。ずっと待っているよ』


天津玲二に電話をかけ会いに来るようにと指定された場所は、羽瀬君のマンションから電車で2駅ほど進んだ所にある小さな港だった。

あれほど恐れていた人間に会いに行くというのに、不思議と内心は怖いくらいに済んでいた。

まるであらゆる感情が抜け落ちてしまったかのような感覚は初めてで。ぼうっとした足取りでその港にたどりついたのは、夕方の6時半だった。

まだ夕方だというのにどっぷりと日は暮れていて、12月の冬の空はまるで夜中のように暗い。

海に反射した満月の光がなんだか眩しくて思わず目を伏せた。
堤防に足を進めそっと下を覗くと、水面に浮かぶ外灯に照らされた姿が、一瞬お姉ちゃんのように見えて目を見張った。


「お姉ちゃん…」


ごめんなさい。ごめんなさいお姉ちゃん。いくら誰に何を言われても、私のせいではないと慰められても、それでも、やっぱり私がいなければお姉ちゃんが殺される事は無かったし、あの夜私が自分でDVDを返しに行っておけば、殺されていたのはお姉ちゃんではなく私だったのだ。

危険なのは私だけじゃなく、私と瓜二つな見た目をしているお姉ちゃんも一緒だって事くらい、ちゃんと考えればわかる事なのに。
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