恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
そして、その日の放課後。
「相澤、後は俺がやるから。先に帰ってていいよ」
そう言って俺は、相澤の手から学級日誌を取り上げる。すると、相澤はまだ腫れの残る目で俺を見上げ、申し訳なさそうに首を横に振った。
「そんな、申し訳ないよ。この間も掃除当番手伝って貰っちゃったし…」
「いいから。早く家に帰って課題やらないと終わらないんじゃないのか?」
そう言って少しからかうように返す。
相澤が大の苦手とする現代文の課題が大量に出ていたのだ。図星ではあったようで、相澤が少しばつが悪そうに目を反らした。
「後、課題終わったらすぐに寝ろよ。酷い顔してるぞ」
「ええっ…。やっぱりクマ分かる…?」
その自覚はあったようで、相澤は両目の下にくっきりと入ったクマを両手で覆いながら俺にそう尋ねた。おれに俺が頷いてみせると、相澤はしゅんと肩を落とした。
「とりあえずもっと休め。何かあった事くらいわかってるんだからな」
「………。」
そんな俺の言葉が引き金だったのか、その日相澤は初めて俺の前で涙を流した。
あまりにもあえかな相澤の涙を止めようとその頭を撫でる。だがその行為は逆効果だったらしく、相澤は俺の制服の袖をきゅっと握り、嗚咽を必死に噛み殺しながら泣き続けた。
結局その日相澤は一体何があったのか語らなかったし、俺もそれを聞く事はしなかった。