虹色アゲハ
本当に守りたかったのは、私じゃないくせに。
その言葉通り、ここまで自分を犠牲にして守ってくれるなんて…

倫太郎の気持ちを知らない望は、複雑な思いで胸が締め付けられる。


そして、その人を想っていたから抱いてくれなかったのかと…
切ないながらも合点する。

そんな自分の気持ちと、仁希の目的と、私の感情の…
3人分を1人でずっと抱えてきて、辛かったわよね。
望は瞳を滲ませた。


「…だけど。
今度は私が守ってあげる。
あんたが目覚めるまでずっと」

キュッと涙を拭って、そう気持ちを奮い立たせると。

「でも女に守られるのがシャクなら、早く起きる事ね。
それに、やっと私のお守りから解放されたんだから…
男なら、クソみたいな人生返上してやりなさいよ」

今にも「っせーな」と返ってきそうな寝顔に、そうけしかけた。



それから。

「じゃあ…
今日は行くとこがあるから、また明日ね?」と。
病室を後にした望は…

鷹巨がいる拘置所に向かった。


鷹巨を裏切ったせいで、倫太郎をこんな目に遭わせてしまったと。
この一週間、途方もなく自分を責めてきた望だったが…
しっかりしなきゃと、気持ちが少し落ち着いたため。
ちゃんと鷹巨とも話さなければと思ったのだった。
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